「くわ科」に属する「こうぞ」には、南方の温暖な地域から伝わった「かじの木」と、在来の「こうぞ」があります。こうぞは正倉院の文書のうち、すでに大宝2年(702年)の戸籍に使われており、1300年以上前から和紙の重要な原料だったのです。処理の方法によって柔らかい紙からコシのある紙まで作ることができ、「かげろうの羽」の威名を持つ「土佐典具帖紙」をはじめ、障子紙、表具用紙、書道用紙など、手漉き和紙に最も広く用いられています。


「じんちょうげ科」に属する「みつまた」は中国渡来の落葉低木で、枝が3本づつに分かれていることからこの名前がつきました。日本では和紙に使われ始めたのが慶長年間だと言われています。強靱で光沢のある滑らかな紙肌が出来ることから、紙幣の原料や印刷用紙、書道用紙にも配合されて使用されています。


「じんちょうげ科」に属するがんぴには「がんぴ」と「きがんぴ」の種類があります。成長が遅いため、一般には栽培されず、野生のものを和紙の原料とします。奈良時代からすでに使用されており、「こうぞ」「あさ」と並ぶ重要な原料でした。その繊維は繊細で、紙は優美で光沢があることから紙の王と呼ばれています。


「にしきあおい科」に属する「とろろあおい」は、中国渡来の植物です。根をすりつぶし、こうぞやがんびなどにまぜて使用します。とろろあおいはノリの役目をし紙を漉くときに適当なねばりをあたえ、作業をしやすくし、丈夫な紙にする働きを持っています。別名ねりとも呼ばれています。

あさ
「くわ科」に属するあさは古くから紙の原料として利用され、中国の前漢時代の遺跡から発掘された紙も原料に使用しているほどです。日本に伝来してから、時代が進むにつれて他の原料にとってかわられましたが、最近では「あさ」の持つ繊維の特徴を生かした日本画の用紙等に利用されています。
 

  いなわら
「いね科」に属するいねには多くの品種があります。非常に細かいその繊維は、書道用紙として、優れた性質をもっています。また、表面強度が高いため、印刷用紙としても利用されています。
 

  たけ
「いね科」に属し、「まだけ」「もうそうちく」等、多くの種類があります。中国原産ですが、広く日本にも生育しています。日本では江戸末期から紙の原料として使用され、その吸水性の良さから書道半紙等に利用されています。